勤務医インタビュー Team
神経内科医として勤務をしたのち在宅医療の世界へ
今ではみどり訪問クリニックに居なくてはならない存在。
いつも穏やかで優しい森先生にインタビューを実施した。
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なぜ、みどり訪問クリニックで働こうと思ったのでしょうか?
大きな決め手を教えてくださいみどり訪問クリニックが「成長を大事にする」クリニックであったというのが1番の理由です。前職は神経内科医であり、在宅医療は無学の分野でしたので、より多くのことを学びたいという気持ちがありました。就職先を選ぶ時は、誰が指導医なのか、在宅医療の経験は十分得られるのか、ということを考えていました。ただ、それよりもクリニックが「成長をしていく」という姿勢そのものが、今の自分にとって必要な刺激だと思いました。
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入社前、みどり訪問クリニックは成長意欲があると判断した理由は?
最初はホームページ上で情報収集をしていました。特に勉強会をやっている風景を見ていましたね。実際に見学に行った時には、職員の方が成長するために必要な工夫をしていることがわかり、ここで働きたいと思いました。
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在宅医を学びたいと思った理由は?
病院勤務医時代に何名か在宅医療が必要な方を見てきて、必要性を感じたのが大きな理由です。神経内科では、脳卒中で片麻痺になった患者さんや、思うように歩けないパーキンソン病の患者さん、認知症で寝たきりになってしまった患者さんなど、外来に通うのが困難な患者さんをたくさん診てきました。そのような患者さんを自宅で医師が診る体制が明らかに不足していました。さらに今後もそのような患者さんは増えていくと思っています。そのような患者さんのために在宅医療が必要となるならば、自分が在宅医療を学び、地域に貢献しようと思いました。
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ここで実際に働いてみてどうでしたか?(思っていたことと現実の差など)
自分がイメージしたクリニック像と思ったとおりでした。入社後の差は特に無かったです。姜先生をはじめ、組織全体としても成長・改善を常に目指しているクリニックだなぁ…と思いました。そういう姿勢があることが僕にとっては良い刺激になっています。入社前には、ディスカッションを姜先生として、「ここは成長意欲がある」ということをお聞きしていました。実際に姜先生と話をしたのは、見学へ行って1日話した程度です。当時は、病院勤務していたのでそれほど時間をかけられませんでした。
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若手ドクターが勤務先を選ぶ際に必ずチェックすることを教えて下さい。
待遇(給与・休み・当直体制など)も見ますが、クリニックの雰囲気や特徴も見ます。自分に合っているかどうか。僕は成長を欲していたのでそういう雰囲気があるクリニックを探していました。
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若手ドクターは成長を欲しているのでしょうか?
10年目以下のいわゆる若手の医師はそういった成長意欲の高い方が多いと思います。第一優先が「お金」という人はそこまでいないと思います。まずは、キャリアアップや成長を気にされているのではないでしょうか。
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若手ドクターの求めるもので休みや待遇というのは二の次ですか?
若手ドクターがすべてか、というとわからないですけど、休みや待遇が第一ではない人の方が多いのかもしれません。ただ、休みも欲しいというのが正直なところです。
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若手ドクターがこんな勤務先は嫌だ!と思うことを教えてください
指導体制がない職場ですね。放置されて、「じゃあ、自分で診療してやっておいて」という体制は、診療ができているかどうか不安ですし、指導医によるフィードバックがないと独りよがりの診療になってしまうので…入社する前に誰が教えてくれるのか、どんな指導体制なのかがわかれば安心しますね。僕は在宅専門医を取得したかったので、人材紹介会社へ依頼する時も、指導プログラムがあるところだけに絞っていました。
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当直を初めて経験した際にどのように感じましたか?
当直の負担はそれほどないな…という印象でした。みどり訪問クリニックの当直体制の負担が軽くなっている要因は2つあると思います。1つは、3人常勤医師がいて、週末を1日ずつ交代でやるのではなくて、週末の金〜日を1人で当直しているので、3週に2週は休みになっているところです。週末フリーの週があるのが大きいですね。金土日を別々の当直医に分けるとほぼ毎週末仕事がある状態になってしまうので、まとまっている方が良いと思います。2つ目は、平日にきちんと診療をしているということだと思います。平日にきちんと患者さんの診療をして患者さんやご家族に十分に説明ができているため、夜間や休日の往診が減っているのだと思います。
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当直がある次の日の出勤時間や働き方を教えてください。
普段と同じです。通常通り出勤しています。
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当直は体力面・精神面ではいかがですか?
体力的には全く問題ないです。呼ばれる回数がすごく少ないので。ただ、電話を持っているだけで、「電話がいつなるかわからない」という状況から精神的には疲れることもあります。
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精神的な負担はどのように乗り越えているのですか?
「乗り越えた」ということはないのですが、少しずつ慣れてはきました。急変の対応も病院とは違うので、最初は緊張しましたし、怖かったです。そもそも1人で患者さんの家にたどり着くのか、訪問した時にパソコンやプリンター等の機材のトラブルなく診療できるのか、病院に搬送する際の手続きはうまくいくのか…全てに自信がない状況でした。ただ、それも数をこなすうちに技術的には慣れ、それがなんとなくの不安を減らすことに繋がりました。ただ、今でも当直の日は緊張しています。
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診療ノルマは無いと聞きました。このことに関してどのように感じますか?
僕はノルマを受けたことが無いのでわからないのですが、1日○件というノルマがないと、プレッシャーを感じないで患者さんとしっかり向き合えていると感じています。ノルマのために焦っている雰囲気が出てしまうと患者さんにも伝わるので良くないですね。ノルマは雑念になってしまうので、ない方が医療に集中できますね。
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看取りを初めて体験した時の気持ちはどんな気持ちでしたか?
最初の看取りは不安でした。もちろん看取るまでも不安でしたけど、看取ったあとも不安は拭えませんでした。自分はちゃんとできたのか?という不安です。あの時、あの治療をしたらもっと穏やかだったのではないかとか、ムダな延命治療をしていたのではないとか、死期を早めてしまったのではないかとか。いろんな「たられば」を考えていました。答えのないことをすごく考えました。今まで病院で働いていた時は、治ったとか生き延びたとかで正解・不正解がある程度はわかりました。ただ、看取りを前提にしている治療は、最も良い亡くなり方を目指しているので、ベストの治療方が看取った後でもわからないでいます。いくらご家族が「良い亡くなり方でした」と言われても、本当にこれでよかったのだろうか?といつも考えます。今も最良は何か?をいつも考えています。
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働きはじめて最初の課題は何でしたか?
周囲のサポートなどエピソードがあれば教えてください。最初の課題は在宅医療に関する知識でした。ずっと神経内科医として病院で勤務していたので、他科の知識や在宅医療の知識が乏しく、それが最初の課題でした。乗り越えられたかどうかはわかりませんが、一緒に働くスタッフに教えていただきながら少しずつ習得しています。医師や診療アシスタントから学ぶことは当然多いのですが、意外と事務さんに教えてもらうことが多いです。在宅医療の制度は、極めて複雑な仕組みになっていて、知らないと患者さんや他職種に不利益を与えることになりかねません。そういった時に事務さんに尋ねると、明確に答えが返ってくるのでとても助かっています。
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他の異業種の人との人間関係(ヘルパーさんや地域包括支援センター等)で悩みはないですか?
悩みは特にないです。皆さん親切にしていただいているので助かっています。
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どなたに質問することが多いですか?
質問や相談は医師だけでなく診療アシスタントさんや事務さんによく聞きます。アシスタントは診療中、常に一緒にいるので必然的に多くなりますね。医師には医学的なことを聞くことが多いです。事務さんに聞きたいことは緊急でなければ、クリニックに戻ってから聞いています。外出先ではすぐに事務さんには聞けないので、経験のあるアシスタントさんに質問をしています。「こういう時にはどこの病院へ送ったら良いか」「この方に訪問看護を毎日お願いしても大丈夫か」などを経験豊富な方へ聞いています。
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ドクターが事務さんに聞く…それも珍しい形ですね。
他院はどうかわかりませんが、みどり訪問クリニックの事務さんの知識量は膨大です。それが専門とはいえど、僕が調べてわからないこともすぐに返答して頂けたり、調べて答えてくれることもあります。言われたことをただやっているだけでなく、明らかに事務さんは自力で知識を蓄えて進化しています。尊敬しています。
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みどり訪問クリニックさんと他院の事務さんの違いは?
他のクリニックを見ていないので正直わかりません。ですが、レセプトを外部業者に任せているクリニックよりは自前でやっている当院の事務さんのほうが知識は必然的に豊富になるのではないでしょうか。
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一人の医師が自立して訪問に行けるまでにはどのくらい期間が必要ですか?
自立するレベルは人それぞれだと思うので、まだ正直わからないです。僕とアシスタントの2人でいくようになったのは入職後4週間、1ヶ月くらいでしたね。単純に行って、診療してカルテ書いて、処方箋を印刷して渡すという一連の流れはすぐに身につくかもしれないですが、患者さんのケア体制までを考えた「自立」だとしたら、まだ時間がかかると思います。
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先生が訪問してみて、これは訪問診療って深いなと思ったポイントは?
やっぱり看取りですね。
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看取りに関する準備のことでしょうか?
どういう状態だと患者さんは幸せで、そのご家族が幸せなのかということが、そもそも最初はわかりませんでした。ただ痛みや息苦しさがないことが幸せなのか、1日でも長く生きることが幸せなのか、ご家族と話す時間が少しでも長くとれることが幸せなのか、本人にとっての幸せは自宅にあるのか病院にあるのか。訪問診療は医学そのものの深さより、「患者さんとご家族の幸せ」について考えることの深さ、難しさがありますね。
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勉強をすることは医学以外にも多いですか?
多いですね。医学スキルは有限かもしれないですけど、人を幸せにする方法は無限な気がします。
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ここで働くことについて、ご家族は何か言っていますか?
働きはじめてからは、家でいろんな話をするようになりました。「こんな患者さんがいて、こんな状態で」とか「この治療はいたずらに命を伸ばしているだけじゃないのか」とか。奥さんは「在宅医療は温かみがあっていいね」と言ってくれています。
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以前の働き方と大きく変わりましたか?
神経内科医時代の働き方は、ありきたりな言葉ですけど、疾患を治すという気持ちが強かったような気がします。訪問診療は治すというよりは患者さんやそのご家族を幸せにすることがゴールだと思います。その点で、診療のスタンスは少し変わりました。
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休みの日の過ごし方は?
子どもと遊んでいますね。出かけたりしています。週末も交代制なので、子どもとの触れ合う時間はたっぷりあります。特に電話を気にしなくて良いので、ゆったりしていて奥さんも喜んでいます。病院勤務のときはピッチを常に持ち歩いていて、いつでも呼ばれうる状態だったのでどことなくリラックスしきれないところがありました。その時はあまり気づいていませんでしたが…。あとは映画をのんびり見られるようになりました。今までは映画中にピッチが鳴ったらと思うとゆっくり映画も見られませんでした。この前、当番ではない日に奥さんと2人で映画を見たんですが、「あ、のんびり映画を見ている…」とふと思いました。週末は気持ち的にのんびり過ごせるようになりました。仕事を忘れて、心身ともにリセットでできるようになりました。
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在宅専門医だからこそ対応ができて、
外来中心のかかりつけ医では対応しにくい症例ケースはありましたか?(外来比べてという話)当然ですが外来に通えない人ですね。身体的な問題とか、認知機能の問題で外来通院が困難な方がいらっしゃいます。訪問診療は外来に比べて時間をかけることができます。時間をかければ、信頼関係を築きやすく、御本人の最も大切にしている気持ちをお伺いすることができます。それこそ、人生の最終段階に入った方の思いというのは、なかなか他人にはお話されません。それまでしっかりと信頼関係を気づいた人にのみ自分の思いを話されます。なので、患者さんにとって一番良い診療ができるのは、しっかりと時間をとって診療している在宅医なのではないでしょうか。
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外来と在宅の大きな違いは何だと思いますか?
時間と場所です。時間はさきほどもお話したように、それだけで色んな情報を知り得ます。人生観、死生観、家族関係、これまでの経験、好きな物、好きなこと、誰かに伝えたいことなど医学的な事以外に、人生の最終段階の診療に影響を与える重要なことを聞くことができます。また、スケジュールにもゆとりがあるので、患者さんからも自分の思い(症状について、自分が今後どうしたいのか、何が悩みなのか)を言いやすいと思います。場所に関しては、患者さんの生活の場に赴くことで自然と生活環境(場所やご家族や食生活・手すりがあるのか、杖があるのか、段差があるのかなど)や家族構成、思い出(写真など)を知ることができます。
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ここでは様々な研修を行っていますが、実際に受けてみての感想をお願いします。
朝、毎日勉強会していますし、それ以外にも適宜勉強会を設けています。勉強会は学んで成長するっていうのもありますが、成長する喜びを感じることで自己研鑽への動機づけになっていますね。なかなか自分ひとりで勉強するのって大変だと思います。みんなで勉強して、それに触発されて「じゃあ自分でも少し勉強してみようかな」と思える環境が自分には合っていると思います。
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将来はどのような在宅医を目指していますか?
患者さんとご家族が安心して幸せに生活できる診療をしたいです。病気が進行したり死が迫ったりすることが必ずしも不幸せであるということも在宅医療を通して学びました。病気がどんどん進行してあと一週間で亡くなるかもしれないという時も、本人やご家族が落ち着いていて、最期を迎えることがあります。病気を治して穏やかに生活していただけることが一番望ましいことですが、それが叶わない時、病気が進行して亡くなりそうな時であっても、本人やご家族が安心できるような状況を作りたいです。どのような状況が幸せなのか、安心できるのかを理解しそれにむけて行動をうつせる在宅医になりたいです。
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ずばり、みどり訪問クリニックに向いているドクターはどんなドクターでしょうか?
経営に興味がある人だと思います。
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なぜ、そう思ったのですか?
姜先生が経営にすごく興味がありますので話が合うと思います。姜先生にもっと聞きたいことがたくさんあります。僕は最初から経営に興味があったというよりは、これから開業するには経営を学ぶ必要があるなと思っていました。だから、将来の開業をするためには経営に詳しい院長がいるところで学べば良いと思っていたんです。ですが、最初は「経営は必要」というところから、今は、「経営は必要なおかつ面白い」っていうところになっています。この感覚になったのは姜先生の力が大きいですね。
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これから在宅の世界に飛び込もうとしているドクターに向けて、一言をお願いします。
在宅にしかない面白さが絶対にあると思います。在宅の診療には“方程式がない”というところです。病気を治すことがゴールなら、論文やガイドラインから得られる知識である程度の治療方針の正解はみえてくると思います。専門医が集まれば統一見解が出ることもあります。ただ在宅の場合は、病気を治すことも必要ですが、「患者さんを幸せにすること」が真のゴールだと僕は思っています。そのゴールにたどり着く方法が患者さんごとに全員違います。単純に長く生きたい人、痛みさえなければいい人、家族に囲まれていたい人、誰にも迷惑をかけたくない人、一日中寝ていたい人、とにかくたくさん食べたい人、言い出したらきりがありません。患者さんが思う優先順位はそれぞれで、その思いを聞き出し、なるべくそれに寄り添うかたちで診療し、ケア体制にもアドバイスを入れる。そもそもその患者さんの思いを聞き出せる関係性を築く必要があります。患者さんは死生観や人生観は知人程度の人にはカンタンに伝えられないことです。患者さんが幸せでいるというゴールにたどり着く方法は無限に考えられます。だからたくさん考えるし、自分の接し方や話し方を工夫したり、情報を得る。奥が深いから面白いといえるのかもしれません。
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在宅医にはどういう能力が必要ですか?
もちろん全ての診療科の相談をされるので、幅広い医学的な知識が必要だと思います。それに加えて、患者さんに安心を与えられる人間性。それが入り口でしょうか。それ以外にも多くの能力を必要とされる気がします。「総合力」ともいえるかもしれませんね。